色の名前には意味がある
jam.[color]で使用しております色上質紙。
今回はその中から、花の名前にまつわる色のお話です。
色の名は~伝統色編~を未読の方はぜひ先にそちらからお読みください。
1、桃
桃の花
桃の花の色をイメージした色です。
日本では、桃は縄文時代以前から栽培されていたそうですが、甘い実を付ける品種は江戸時代まで輸入されることがなく、それまでは、観賞用、薬用の花木として親しまれていたようです。
薬用の桃と聞くと仙桃(仙人が食べる不老長寿の実)を思い浮かべますが、種を割ると出てくる桃仁(とうにん)が漢方薬として使用されるそうで、血行を良くし、便秘にも効果があると言われています。
桃にまつわるエピソードは多く、 伊耶那岐命が黄泉の国から逃げ帰る際に白山菊理姫命が黄泉醜女に3個投げつけて追い払ったとか、桃源郷だとか、桃太郎などなど、枚挙にいとまがありません。
実としては、古くから病魔や厄災を退治してくれる象徴とされているようです。
花にも、鬼を祓う力があると言われています。
では、桃の花の方ですが、花言葉としては
『私は貴方の虜』『チャーミング』『気立ての良さ』『恋の虜』
と、されています。
他に『天下無敵』という花言葉が出てきますが、
これは先ほどの伊耶那岐命のエピソードにちなんだ「実」の方の花言葉です。
鬼(黄泉醜女)を追い払うほどの力があるので、天下無敵なのだそうです。
桃の花のエピソードというのは、あまり見受けられず、三国志で有名な「桃園の誓い」のシーンくらいなのですが、これも「桃園」となると桃がメインなのか桃の花がメインなのか迷うところです。
桃といえば「実」なのか「花」なのか、色としても実から来てるのか、
花由来なのかと考えてしまいます。
とはいえ、桃の実は実際は赤色から黄白色のグラデーションなので、
今回「花」として取扱いました。
2、藤
藤の花
藤の花の色をイメージした色で、淡い紫色をしています。「藤色」を英語にすると”wisteria”で、藤の学名と同じです。
藤は振り袖姿の女性に例えられるように、艶やかで優雅な印象の花です。地元大阪の福島区野田の「ノダフジ」は特に有名で、毎年4月にはふじ祭りが開催されています。
ちなみにノダフジの蔓は右巻き。
近畿以西に自生するヤマフジの蔓は左巻きだそうです。
某アニメの影響か、藤には魔除けの効果があると思っておられる方もいらっしゃるようですが、実ははっきりとした伝承や通説といったものは見当たりません。
とはいえ、藤の花には毒があり、神社に藤の花が多いといったことから
あながち間違ったイメージではないのかもしれません。
(※藤の花は天ぷらにして食べたりしますが、食べ過ぎるとお腹を壊すこともあるそうです。)
花言葉としては、
『優しさ』『歓迎』『決して離れない』『恋に酔う』
と、されています。
『決して離れない』というのは蔓が巻き付いたらなかなか離れないことから来ています。
現代ではストーカーを意識してしまいそうな、ちょっと怖い意味に思われるかもしれませんが、元々は「固い絆」とか「一途さ」をイメージして付けられた花言葉です。
また、「フジ」は良い意味では「不死」、悪い意味では「不治」に通じ、どちらとも取れるということからお見舞いには不向きとされています。昨今、病院には花を持ち込めなかったりするので、今では無用の知識と言えるかもしれませんね。
3、桜
桜の花
桜色といえば、見本写真のように薄紅色を想像しがちですが、実は白色から濃い紅色まで品種によって幅がありますね。
とはいえ、桜といえば日本の春の花を代表するといっても過言ではない花。
入学式で見るあの桜(ソメイヨシノ)の色と思って良いでしょう。
獣肉食禁止時代に馬肉を隠語で「さくら」と呼称したのは、新鮮な馬肉の色を桜色ととらえたからと言われています。
(諸説あり)
「サクラ」とカタカナで書くと「客のふりをした売り手の仲間」という意味にもなりますが、こちらは「パっと景気よく振る舞って、サッと消える」ところから桜の性質になぞらえたのだと言われています。
(こちらも諸説あり)
花言葉としては、
『精神の美』『優雅な女性』
八重桜だと
『おしとやか』『豊かな教養』
と、されています。
桜は観賞するだけでなく、幹は木材、樹皮は漢方薬、花や葉は塩漬けして和菓子の材料にしたりと、余すことなく使われ、私たちの生活に欠かせないものとなっています。
また、桜の木が川沿いに多いのは、「享保の改革」で治水対策として植えられたのが始まりだそうです。
桜を植えることで、土手の決壊を防ぎ、花見で人を集め、多くの人に踏み固められることによって、川岸の地面がしっかりするといった施策だったようです。
桜といえば、「桜の木の下には死体」のイメージを思いうかべる方もいらっしゃるでしょう。
このイメージの元は梶井基次郎著の『桜の機の下には』という短編小説です。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている!」という台詞が冒頭そのまま出てきます。
桜のあまりの美しさにはそんな理由があるからだ!とのたまう主人公の感覚にどこか納得してしまいます。
それくらい、桜はその美しさと儚さで私たちを魅了してきたのだと言えるのではないでしょうか。
まさに、日本の春の花THE代表!といった感じです。
今回ご紹介した花はどれも春の花で、桃は3月、藤と桜は4月が見頃ですね。
その繊細で柔らかな色合いはまさに春にうってつけの色と言えるでしょう。
そんな花の名を冠する色上質「桃」「藤」「さくら」はjam.[color]で使用しています。
実際にお手に取って見てみれば、その花の名に相応しい色合いであることがお分かりいただけると思いますよ。
次回は、「ラベンダー」「コスモス」「あじさい」といった花の名前にまつわる紙のご紹介となる「色の名は~花の名前編~その2」をお送りさせていただきます。